青雪江ゼミの振り返り

Wathematicaで行っていた青雪江ゼミがつい先日終了したのでその活動報告をします!

ゼミの概要

その名の通り、使用教科書は雪江明彦先生の『代数学2 環と体とガロア理論』(日本評論社)です。最近新版が出ましたね。

1人1節ぐらいで発表担当をあらかじめ決めておいて発表する輪読形式のゼミを行なっていました。自分が2022年1月頃から群論のゼミをしていたのですが、その続編として2022年夏頃にこのゼミは始まりました。週1回、空きコマを使って90分程度やっていたのですが、特に長期休暇中は予定が合わないことも多く、1年以上続く長期ゼミとなりました。ちなみにWathematicaはありがたいことに今年度から公認サークルとなっているのですが、早稲田大学の公認サークルガイドに掲載している写真の1つは青雪江ゼミのものです。

長続きしたゼミなのでメンバーは入れ替わりがあったのですが、だいたい6人ぐらいでゼミを回していました。最終的には全員数学科でしたが、物理系の人も参加してくれたことがありました。現B3が多数でしたが、B2数学科の2人が最後まで参加してくれましたね。すごい。

内容について

このゼミの方針として、節のタイトルに*がついているものと、演習問題は基本的に飛ばしました。(むずかしいので...)

第1章 環論の基本

このゼミが始まる前の群論ゼミは同じく雪江先生の『代数学1 群論入門』(日本評論社)を使っていて、その続きとしてまずは環論の基本を学びました。イデアルの話とかもうかなり前の記憶になってしまいましたが楽しかったです。一番印象に残っているのは「k代数」かもしれない。この概念が何がしたいのかよくわからなかった。「k代数の準同型」ってのがガロア理論のところですごく重要になります。この章で一番大事なのはもちろん「§1.11 一意分解環・単項イデアル整域・ユークリッド環」ですよね。特にUFDの性質は代数学の授業の試験でもめっちゃ使った記憶があります。この章で示す性質の中には3章や4章でいきなり使うものがあって、出てくる度に戻るのが大変でしたね〜(命題1.11.38有限体の乗法群は巡回群、定理1.12.11アイゼンシュタインの判定法、など)

ちなみに最後のネーター環アルティン環については全然理解できていません(汗)

第2章 環上の加群

前半は線形代数の復習みたいな感じで勉強になりました。後半はザ・代数って感じ。§2.7の有限性の話はその後の体論でも使うのでちゃんとやった方がいいですが、それ以外はガロア理論(方程式の可解性)の理解のためには正直やらなくてもいいです。テンソルの話とか完全列とか自分は全然分かってません(泣)。代数幾何とか代トポとかやりたい人は全部ちゃんと読んだ方がいいと思います。

第3章 体論の基本

今年の4月ぐらいから3章に入りました。ここから体の話。楽しくなります。§3.1は自分が丸々発表担当したんですが結構長くて大変でした。§3.2では代数閉包の存在を示すのですが、Steinitzのアイデアはすごいなーと驚いた記憶があります。あとは分離拡大、正規拡大、単拡大、有限体の性質など大事なことばかりです。演習問題をちゃんとやると代数学の授業のテスト勉強に良さそう。

第4章 ガロア理論

これも§4.1が長い。自分が発表担当だったんですがキツくて基本定理のところはバトンタッチしちゃいました。体の拡大で正規拡大かつ分離拡大であるものをガロア拡大と言って、それをL/K(LがKのガロア拡大)とします。このときL上のK自己同型群のことをLのK上のガロアといいます。ここまで長いこと出番がなかった群論ですが、ガロアの発想のすごいところは、「ガロア拡大な体の列があるとそれが正規部分群の列に対応して、体のガロア群が対応する群の剰余群になる」というところです。それを示したものがガロアの基本定理で、方程式の可解性の証明で一番大事なものになります。この節のあとは具体的な3次方程式や4次方程式の解法を眺めて「方程式が解けるとはどういうことか?」ということをなんとなく理解し、円分体や作図問題、クンマー理論の話を挟んで方程式の可解性の節に入ります。方程式の可解性の証明はめちゃくちゃ長いし行間もあって大変でしたが、何をやっているのか理解できるとすごく楽しかったです。

ゼミを振り返って

「5次以上の方程式に(代数的な)解の公式が存在しない」という言葉は有名な話で、自分は高校生の頃にこの言葉を聞いて、大学の数学に興味を持ちました。数学科に入って理解したいことの1つとしてガロア理論というものをずっと夢に見ていたので、青雪江ゼミをこのような形で終えることができてすごく嬉しいです。このゼミの前身となる群論ゼミはB1の1月ごろに始まったので、そこから数えれば2年近い期間、雪江先生の代数学の本でゼミをしていたことになります。群論ゼミが始まった当時の自分は対面のゼミをほとんどやったことがなく、大学数学の勉強も授業以外ではまともにやっていませんでした。ですので自分は雪江先生の代数学の本を通じて大学数学との向き合い方を学んだとさえ思っています。結局のところ自分は代数学の道には進まないのですが、雪江先生の代数学の本にはたくさんの思い入れがあります。また、ずっと自分がゼミ長をやっていたのですが、長いこと一緒にゼミをやってくれた方々には感謝の気持ちでいっぱいです。

最後に

Wathematicaでは雪江先生の代数学の本でゼミをやるのが伝統みたいになっていて、現在はB2の数学科でやってる「青雪江ゼミ2023」やB1の物理系の会員を中心に頑張っている「群論ゼミ」があります。もしもこの記事を読んでくれた早稲田生でまだ代数学を全然勉強したことがない方がいましたらこれらのゼミに参加したり新しくゼミを立ててみてください。

自分はこれだけ代数のゼミをやっていましたが、実は解析専攻(の予定)でして、もう代数やるつもりはありません(笑)。ただガロア理論はめっちゃ面白かったので、まだ大学の代数の授業もあるし復習したいなーとは思っています。ガロア理論って方程式の話だけだと思っていたんですが、深く学んでいくとガロア被覆とかいう幾何っぽいテーマがあるらしいですね。まぁ自分はその辺はやるつもりはなくて(笑)、代数を勉強するなら方程式の可解性に関するテーマの理解をもっと深めていきたいかなと思っています。図書館でちょっと借りたことがある『ガロア理論の頂を踏む』とか『ガロア理論講義』なんかを読んでみたいなぁ。あと、体論を学んだら雪江先生の整数論の本の最後の方をちゃんと読もうとか思っていたのをすっかり忘れていました。どうしようかなw

 

とりあえずこの辺で。Twitterをブログにしただけみたいなとても雑な記事でしたが読んでくださりありがとうございました。ガロア理論面白いのでぜひやりましょう。

参考文献

[1] 雪江明彦,代数学1 群論入門,日本評論社

[2] 雪江明彦,代数学2 環と体とガロア理論,日本評論社

[3] 石井俊全,ガロア理論の頂を踏む,ベレ出版

[4]足立恒雄,ガロア理論講義[増補版],日本評論社

[5]雪江明彦,整数論1 初等整数論からp進数へ,日本評論社